今、私の中で彼女の厳しさを音にした荘厳な旋律が流れ始める。
『Mary Queen’s Music』―ヘンリー・パーセル
「ブラッディ・メアリー」。
歴史のページをめくると、そこに記されているのは血の女王。冷たい語りが、私の胸を押しつぶす。
でもその圧は、どこか快楽にも似ていて、ゾクゾクしてどこか惹かれてしまう自分がいる。
皆さん冷たい語りに、どこか惹かれることはありませんか?
「ブラッディ・メアリー」という名の真実
語りの魔女宣言
語りとは、誰かを魔女にする儀式。
語られることで、誰かは異端になる。
語ることで、私は魔女になる。
メアリーは、語られる前から魔女だった。
カード選定〈皇帝〉〈Justice〉〈The Moon〉
〈皇帝〉の意志を背負い、〈Justice〉の剣を振るい、〈The Moon〉の沈黙に火を灯した。
語りはねじれであり、火であり、沈黙を破る快楽でもある。
タロットに映る〈皇帝〉と〈Justice〉〈The Moon〉
カード構成:〈皇帝〉正位置/逆位置・〈Justice〉・〈The Moon〉
〈皇帝〉正位置:一歩足を踏み出し、沈黙に意志を示す者
〈皇帝〉逆位置:権力の硬直と暴走、語りの暴力性
〈Justice〉:語りの断罪構造とその冷静な残酷さ
〈The Moon〉:孤独・幻想・沈黙の揺らぎ

Mary I of England, Antonis Mor, c. 1554 (Public Domain) — via Wikimedia Commons
語りの魔女としての覚悟と葛藤
語りの圧と断罪の快楽
約300人を火刑に処したその語りは、断罪の剣として振るわれた。
しかし、語りの魔女としての視点では、その剣はただ振るわれたのではない。
それは、「自分と母の人生を奪った敵」へ向けられた。
それは、義務と使命の剣だった。
そして、強固な信仰と「神と王権」への誓い。
メアリーの中で燃え滾る火が、血を流す重ささえ凌駕した。
心には確固たる意志があった。
しかし、その意志の裏に孤独や葛藤が渦巻いていたのではないだろうか。
メアリーは目を閉じた。
メアリーの断罪の剣と慈愛の手
語りの魔女としての心理構造
私は市民たちに自分を投影した。
突然の拘束に、毛穴という毛穴が開き、手足はしびれ、心臓の鼓動のみ耳に響く。
歩く感覚すら失い、目の前は真っ赤に染まった。
何も見えなくなった。
実際の彼らが感じた恐怖は、私の想像をはるかに超えるものだろう。
けれど、投影しただけで、私は怖かった。
こうした恐怖と孤独に、断罪の炎に焼き付けられた彼らの顔が浮かんだ。
語りの両極性
メアリーは、断罪の剣と慈愛の手を使い分けた。
断罪する者には断罪を。
慈悲を向ける者には静かに手を差し伸べた。
広く語られることは少ないが、彼女は看護師として訓練を受け、負傷者の手当てを行った事実も残る。
その選択は、語りの魔女の火であり、沈黙に意志を示す〈皇帝〉の足元に灯る冷たい火だった。
メアリーの内面を照らす冷たい火と熱い火
彼女のペルソナは「血の女王」。
だが、その影には信仰と孤独、断罪への覚悟があった。
メアリーは自らの中の魔女性を受け入れ、語りの中でそれを増幅させていった。
〈皇帝〉の元型を体現しながら、支配と断罪のねじれに引き裂かれ、快楽と孤独の間に立っていた。
あなたは語りの闇と光、どちらに目を向けるか?
あなたは、語りの闇だけを見ていませんか?
光の側にも目を向けていますか?
語りの魔女は、美談でも断罪でもない。
そのねじれに火を灯す覚悟、あなたにありますか?


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